個人的にTexasA&Mについて

私が通うテキサスA&M大学についてひとこと。
独断と偏見で私の思ってることを書きます。
このプログラムについての意見です。 

1976年に世界で始めて水中考古学を学べるプログラムが発足しました。それがNautical Archaeology Program(NAP)です。 NAPはテキサスA&M大学(TAMU)の人類学部の中に含まれています。Institute of Nautical Archaeology(INA)は水中考古学研究所で独立した団体ではありますが、NAP,TAMUとは切っても切れない関係にあります。

マスターと博士号がありますが、大体の人はマスターを取得します。 マスター論文を書いたり、クラスなどを取り、そして教授のアシスタントや保存処理研究所で働いて経験をみます。生徒みずからプロジェクトを始める場合もありますが、教授やINAのプロジェクトに参加して実績を積みます。 一応、2年で終わるプログラムだそうですが、早くて3年、な かには6年ほどかかる生徒もいます。研究熱心な生徒が多いため、論文を中途半端で終わらせたくない学生が集まってます。

授業ですが、最初の一年は船の歴史についてが多いです。 多少テクニカルな面もあります。2年目からは保存処理や考古学論なども学びます。 海事史、航海の歴史、貿易のメカニズム、人と船(海)との関係などなどについて学びます。基本的には地中海、アメリカなどが主です。これはまだアジアなどではそれほど水中考古学が発達していないから仕方がないことなのでしょう。

しかし、海からの視点、船の基本的な構造学を学ぶわけであって、そのアプローチを習得するのがメインです。歴史のディーテールを覚えるのではなく、今までの考古学者が取ってきた研究方法、問題定義、問題解決の方法・論理を詳しく分析し、自分の研究したいテーマに応用させていくことを学びます。そのため、生徒のプロジェクトは教授が特に専門でない場合も多くあります。

よく勘違いされるのは”水中考古学”の技術を学ぶための大学と思われていることです。NAPではそのアプローチを覚えますが、技術は自分で身につけるものであるという考え 方が主流です。学ぶべきものは考古学方法論、問題解決の方法です。また、Nautical Archaeology(海事史考古学)であるため、”水中考古学”ではありません。船の研究がメインであるため、遺跡が水中にあることが多い。 そのため水中で発掘をする。 水中に遺跡があるからそれを研究するわけではありません。研究対象は“船と人間”です。 たまたま遺跡が水中にあるだけです。だから、“Underwater” Archaeologyは学問として成り立たないのではないか?と考える人もいます。 

留学を考えているのなら、英語を確実にマスターすることが先決。 クラスはプレゼンテーションとディスカッションがほとんどです。 そのため、喋れないと全く始まらないと思います。私も初期は苦労しました。取っているクラスにもよりますが、今までに一番忙しかった学期の場合、4ヶ月でプレゼンテーション(30-45分)12回、論文(30-40ページ)x2、その他のプロジェクトが幾つか(保存処理など)がありました。 この上に、アシスタントの仕事、マスター論文、なにか出版したい場合にはその論文などが加わり、さらには自分がプロジェクトを立ち上げる場合にはそのプロジェクトの資金調達のための申込書、その準備などが加わります。忙しい時は良く学校に泊り込みになります。週末は?どう なのかと聞かれそうですが、そんなものは存在しません。  

やる気がないのであれば来る必要はないと思います。実際に卒業しても就職には全く役にたたないでしょうから。数年間をお金を払って忙しく働いて無駄にするようなものです。では、なぜここの大学に現在3人の日本人の学生がいるのでしょうか?それは、考古学が好きだからです。これ以外のことをやっても将来くいが残る生活をすることになるからでしょう。なんとかこの学問で生活をしていく、まともな生活が出来なくてもやりたいことができればそれでいい。そして今の日本には新しい考古学が必要だ! そう考えている人にはお勧めの大学です。  

個人的にはとてもいいプログラムだと思いますし、水中考古を学びたければここがたぶん世界一であることは間違いないと(自分では)思います。 実際に他の水中考古学を教えている大学を見ても、教授はNAPの卒業生であったり、INAのプロジェクトと深く関わっている人達が目立ちます。しかし、これから日本の水中考古の発展を第一目的と考えると、他の大学で学んだほうが良いかも知れません。 オーストラリア、イスラエル、イギリスにはとても良いプログラムがあります。NAPとは違ったアプローチを取っているプログラムがあります。また、技術をもっと中心に教えてくれる場所もあります。 それぞれの良いところ悪いところを学ぶにはその大学で実際に学ぶ必要があります。そして、それぞれの長所を最大限に学び日本に持ち帰ってもらいたいのです。  

現在、日本ではこの学問を学べる環境は整っていません。しかし、世界各国の大学で学んだ学生が日本に戻ってその情報、技術、アプローチ、方法論をまとめあげ、さらに発展させていくことが出来ると思います。いろいろな経験を積んだ人を集めて日本の考古学をよりよいものに築き上げていきたいと思います。 

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