古代の衝角に住む生物

水中考古学は、学際的な分野です。主に海洋学の分野で様々な専門家と研究をしています。特に1980年代後半以降、生物学などの分野とも結びつきが強くなり、水中遺跡に住む生物の研究、環境学などと密接な関係にあります。
アエガテス沖の海戦(カルタVSゴローマ)では、ガレー船などの舳先に取り付けられた衝角が有効な兵器として活躍しました。そして、水中探査の結果、複数の衝角が発見され発掘されています。残念ながら、船体はほとんど残っていません。衝角は重たく沈みますが、船体自体は軽く浮いてしまい、現代まで残らなかったようです。ちなみに、商船など重たい積み荷を積んだ船の船体は良く残ります。
さて、そのうちの一つの衝角についてどのような生物が住み着いていたか、詳細な調査が行われました。100種以上の様々な生物が住み着くミクロな生態系を形成していたようです。水中遺跡は、このように生態系を作り出し、漁礁となります。また、海の豊かさを知る指標ともなります。
これまで、水中遺跡に住む生物の研究は、主に近現代の沈没船が主でした。衝角のように、古代の落とし物のような小さな遺跡(遺物?)に巣くう生物の研究はあまり例がありません。

さて、研究結果。

比較的新しい時代の遺跡に比べ、生物の多様性が認められた。また、数も多い。その海域を代表する多くの生物が住み着いているようです。近現代の水中遺跡は、幼虫期の長い生物、卵などを比較的広範囲に広める・活動範囲の広い生物が多く確認されるようです。一方、今回の衝角からは、その海域で見られる多種多様な生物が確認されたようです。種子拡散能力(?~日本語分かりません…)が狭い生物も多く住んでいたようです。
沈没船には、最初は種子拡散能力の広い生物が住み着くようですが、まあ、当たり前かもしれませんね。今回の調査では特に書かれていませんが、生息域が限定された固有種や新種の発見なども時折聞きます。いくつかの沈没船などを調べてデータベース化していけば、どのように生物が拡散していったのか、そのスピード、過去の環境を知る手がかりなど、面白い研究が出来そうですね。海洋生物が拡散していく速度など、これまでなかなか調べることが出来なかったので、興味深いですね!

豊かな海、生物と沈没船の関係を学ぶ。水中遺跡も歴史を学ぶだけのものではなく、生物環境など様々なことを我々に教えてくれる貴重な資源です。文化遺産(海の遺産)を守っていくことは、我々の使命です!

追加情報!

 

アエガテス沖で調査しているRPM Nautical Foundation

写真をお借りしています!以前、研究資金も出していただきました。お世話になっております…。

アエガテス諸島沖の海戦

アエガテス諸島沖の海戦シチリア島西方のアエガテス諸島付近で、紀元前241年3月10日に発生した、カルタゴローマの海戦である。第一次ポエニ戦争最後の海戦であり、ローマが決定的勝利を収めたことにより長期間続いていた戦争が終結した。(Wikipediaより引用)

 

三段櫂船とラム(衝角)について。山舩晃太郎さんのブログ

古代地中海の海上兵器、アスリット・ラム(紀元前200年頃)

 

 

引用元:https://www.marinetechnologynews.com/news/ancient-shipwreck-supports-diversity-615965

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