3. バーチャル考古学

最近、よくバーチャル・リアリティー(VR)という言葉をよく聞きますが、考古学にもどんどん最先端の技術を取り入れていく必要があると思います。VRとはつまりコンピューターで作られた環境を疑似体験することです。 実際にこれは体験してみないと分からないのですが、ようは遺跡を3次元、または4次元(時間軸)で作られた空間を自分の思ったとおりに動き回ることが出来るわけです。 作られたモデルに重量、質量、浮力、など様々なデータを与えることも出来ます。 発掘された船のモデルを作り、それを元に船がどのように沈んだかなどのシナリオを作り、その中で船を船を沈没させることも出来ます。 現在、キレニア号のモデルが製作中で、積荷など一つ一つも忠実に再現され、船がどうして、どのようにして沈んだかを調べるそうです。 

 写真が最初に発達した時、考古学者は発掘の記録に写真撮影をすぐには導入しなかったそうです。 なぜかというと、1)機材が高価すぎる 2)精密製に欠ける 3)取り扱える技術者がいない 4)時間がかかる割りに図や絵のほうが分かりやすい 5)物事を作り上げ、存在しないものも作り上げることができる などなど。 現在、考古学では写真撮影は必要不可欠な存在です。 3Dで遺跡を再現し、一般に提供すること、そして、技術の最先端を行くこと、それが考古学者の責任だと思う。

バーチャル考古学の最先端を行くDr.Sanders氏のWeb-Siteを参考にごらんください。

The Institution of Visualization of History

アスリトのVRをダウンロードしてみて実際にVRを体験してください。 

VRを体験するにはこちらのソフトが必要

実際に簡単にではありますが鷹島海底遺跡の3D再現を紹介します。 これは、単なる3Dーモデリングであって、VRではありません。 VRでは実際にコンピューターを使用している個人が右、上、後ろなど自由に動き回ることが出来ます。 まず、水中で実測された遺跡の際とプランをもとにベースラインを作り、それに厚さなどの情報を加えていきます。 遺物もそれぞれ作ります。 これらは考古学者なら誰でも書いたことのある実測図や遺跡の全体図、部分図などをもどに作り上げていきます。

実測図をもとに遺物の元になる線を描きます

発掘された木材などは実測図などを頼りに厚みをつけ

遺物もそれぞれモデルを作り...

水中遺跡の3D復元図が完成します

では、なぜ水中考古学、深海考古学では3Dモデリング、VRが特に強調されるのでしょうか? それは、水中であるがために制約を受けるためです。 水中の遺跡には次のような欠点があります。

1) 容易に遺跡を訪れることができない

2) 一般に見学をしてもらうことも難しい

3) 海底では透明度が悪いので、遺跡全体を見ることは不可能 (2m先は闇)

4) 遺物の保存処理に費用が掛かるためサーヴェイがほとんどであること

とくに4)は水中遺跡では重要である。 保存処理の計画なくして遺物を引き上げることは遺物の破壊行為であり考えられない。 また、大型船など引き上げずに水中ですべての記録を取るほうが費用が掛からないはいうまでもない。 そのため、現在行われている水中考古学のほとんどがサーヴェイ(遺物をそのままに残し、記録を残すこと)である。 つまり、数回のダイブで得られた状況を元に遺跡を復元するしか無いのである。 これを考えると、出来るだけすべての記録をデジタル化で記録し、それをVRで再現して研究を進めていく方針がもっとも望ましいと思われる。 一度プロジェクトが終わった後、深海遺跡に再度潜って物事を確認することは出来ない。  フォトモデラー、3Dスキャナー、デジタルレコーディングを徹底して行えば遺跡に戻らずに(また発掘せずに)研究できる。 深海のように遺跡が破壊される恐れが少ない場所ではこの方法が最も効果的ではなかろうか?

こうして出来上がったモデルの遺物一つ一つに実際の写真や他の情報などをリンクさせることもできます。そうすると3Dのモデルをみながらデータベースにリンクされ詳しく学んでいくことが出来ます。 新しい情報が見つかり次第どんどんこのデータベースに足していくことができます。  

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

トップに戻る