九州国立博物館 『海の神々』 – 捧げられた宝物 - 

もうすぐ会館1周年を迎える九州国立博物館で、特別展『海の神々』 – 捧げられた宝物 - が企画されています。 10月8日から11月26日まで展示されています。

海洋考古学は人類学的アプローチも広く取り入れているため、海の信仰は重要なテーマの一つです。神々・信仰が船のルート、船に持ち込むモノ、そして船の作りにも影響を及ぼしているかもしれません。また、海の神々にささげられた宝物などが展示されるそうです。

展示内容は下記のとおりです。

1章 海から生まれた神

海人(アマ)あるいは海部(アマベ)と呼ばれた古代の海の民は、海に住む神霊を祭っていました。『古事記』・『日本書紀』(記紀)では、黄泉の国からもどったイザナギがミソギをした時にワタツミ(綿津見)神とツツノヲノ命が海から出現したといいます。ワタツミノ神は海人族の阿曇氏の氏神であり、ツツノヲノ命は住吉神とも呼ばれ、航海の守護神でもありました。

2章 海上の守り神

海の民の中からは航海を生業とする人々も現れました。記紀では宗像三女神が航海の守護神として生まれました。海上交通の要衝にある沖ノ島や厳島は、島そのものを航海の神として祀られています。また灯台のように目印となる山も信仰の対象になりました。金比羅神はその代表でしょう。また、近世には宝船の絵とともに七福神が流行ります。恵比寿は鯛を抱えた姿で親しまれる漁業の神、弁財天も水辺に祀られ、ともに福運の神と崇められています。

3章 海神の伝説

伝説でよく知られているお話しが、浦島太郎と海幸彦・山幸彦の物語でしょう。記紀によれば、ヒコホホデミノ命(山幸彦)がシオヅツノ翁の助けによって海神の宮へ赴き、海神の娘トヨタマ姫と結婚します。そこで釣針と糸や塩満瓊と塩涸瓊を手に入れて、兄のホスソリノ命(海幸彦)を降伏させたのです。シオツツノ翁はツツノヲノ命と同じ神と考えられ、神功皇后の伝説でもツツノヲノ命が助力しています。

4章 外来の神

媽祖とは、中国の沿海民から絶大な信仰を集める航海の女神です。航海中はその神像を必ず同伴して供養し、航海安全を祈りました。九州でもかつて中国人貿易商たちの活動が活発だった地域に媽祖像が伝来し、今も篤く信仰されています。

5章 海の彼方のユートピア

沖縄をはじめ南島では、海の彼方にやすらぎに満ちた楽土(ニライカナイ)があり、そこは祖先の原郷という信仰があります。沖縄ではこのニライカナイの神が、海を渡ってやってきて豊穣をもたらすと考えられています。この信仰は太平洋の島々に広がってもいます。

まだ九州国立博物館へ行ったことが無い人はこの機会にどうぞ。一度行ったことがある人もまたどうぞ。常設展も多少の入れ替えを行っているそうです。

九州国立博物館は昨年10月の開館から1周年を迎えます。この1周年を記念した特別展「海の神々」を開催いたします。

 この特別展では海の神々をテーマに取り上げます。日本は周囲を海で囲まれていますので、外国の文化は波頭を乗り越えた人々の往来によって伝えられました。航海を担ったのは海の民でした。波や風から身を守り、無事に辿り着くため、また、海の幸を願って海の神々に祈りと感謝の気持ちを捧げてきました。全国の津々浦々に祀られた神々には、絶えることなく捧げ物が供えられてきたのです。

 海の神々に捧げられた宝物を一堂に集める試みは、この展覧会が初めてです。海に生きる人々が神々に寄せてきた想いを探る展覧会を目指しています。初公開される神宝類や神像を含めて、考古・工芸・彫刻・絵画・書跡など貴重な文化遺産を公開します。

開催概要
会 期 平成18年10月8日(日)~11月26日(日)

休館日 月曜休館(10月9日は開館します。)

会 場 九州国立博物館 特別展示室

(〒818ー0118 福岡県太宰府市石坂4ー7ー2)

開館時間 9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)

展示作品総数 約190件 490点余
[国宝6件 重要文化財25件 重要有形民俗文化財4件]

観 覧 料 一 般 1,300円(1,100円)
高大生 1,000円(800円)
小中生 600円(400円)
*上記金額で当館「文化交流展示」もご覧いただけます。
*( )内は前売り、20名以上の団体料金です。
*身体障害者等とその介護者1名は無料です。
 入館の際に身体障害者手帳等をご提示ください。
*満65歳以上の方は( )内料金でご入場いただけます。
 入館の際に年齢の分かるもの(健康保険証、運転免許証など)をご提示ください。

主催 九州国立博物館 RKB毎日放送 毎日新聞社

共催 (財)九州国立博物館振興財団

後援 文化庁、九州・沖縄・各県教育委員会、福岡市、太宰府市、福岡県神社庁、太宰府市商工会、太宰府観光協会

協賛 福岡文化財団、サッポロビール

特別協力 太宰府天満宮

協力 西日本鉄道、九州旅客鉄道、太宰府梅ヶ枝餅協同組合

お問い合わせ:0570ー008886(ハローダイヤル 午前7時~午後11時)

引用元:http://www.kyuhaku.com/pr/exhibition/exhibition_s05.html

1件のコメント

  1. 天之岩舟

    ユング心理学者の河合隼雄氏は、古事記の神話研究を通して、日本人の深層に、西洋の一神教世界とは違う心理が働いていることに着目しています。そこで、「中空・均衡構造」という概念を提示しています。それによれば、西洋型の思考の特徴は、「『統合』への要求が強い」ということである。それに対して、東洋型の思考の特徴は、対立するものを『均衡』させる力が働くというものであるらしいです。 たとえば三貴神といえば天照大神、須佐之男神、月夜見神ですが、月夜見神は殆ど活躍せず、アマテラスとスサノオの間でまるで中空のような存在になっている。天皇制と幕府の関係もそうで、中空部分は出雲がその役割を担っていたのかもしれません。
     「島根県と鳥取県って日本のどこなの?」という問いが日本各地で「印象の薄い県」の代表として扱われます。しかし古事記の修理固成の段にどの律令区分の国(今の県名)よりも先にこの両県名は出てきます。
    しかし目立たないのは目立たない理由があって近代日本のインフラを作るときもわざと投資を避けてきたようなふしが感じられます。廃藩置県直後の東京よりも島根県の人口は多かったらしいのです。
    その古事記に書かれている内容ですが、出雲と伯耆の国境に伊邪那美神を葬ったというくだりです。どうも私には日本の文化の中空の中心がここにあったような気がします。更に付け加えると、出雲と大和朝廷はこの両者にとって神聖な地を、目立たないようにする文化的企てを千年以上に渡り行うことにより、アラブとイスラエルのエルサレムを廻る悲劇をあらかじめ回避してきたと考えたりもする。それって考えすぎでしょうか?しかし、こう考えると中心を持たない日本精神の構造ゆえ、自然状態では諸外国と渡りあえないと考え明治政体は天皇に強い権限を与えたものにした。戦後はまた自然状態に戻ったため中空部分はアメリカナイズされたり、上手な外交手腕を発揮できず、最近ではアジア近隣国になめられ始めてもいるのではないでしょうか。

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