沈没船の所有権について その1

さて、沈没船の所有権について。非常に難しい問題です。沈没船を発見したら、自分のもの?

一昔前であれば、「発見した人」が所有権を獲得するケースが考えられました。これは、特に沈没船を保護する法律がなかったので、一攫千金を望んだトレジャーハンターが勝ち組だったわけです。ただし、最近では、水中文化遺産保護の法律などが出来上がっており、トレジャーハンターが活躍できる場所は限られてきています。

ただし、もし、明確に沈没船の所有者がいたらどうなったでしょう?

ここ100年ほどの間の船であれば、所有者がいるケースが多いようです。文献資料などで沈没船が特定できればですが、もとの所有社(なんたら開運など)、もしくは、保険金をかけていた場合、保険会社が所有権を主張することもできます。

また、国が所有権を主張する場合もあります。海軍の船は、基本的に、沈没しても、その国の所有権は継続していると考えられています。これは、例えば戦国時代に日本へ来たガレオン船も国の船と考えられているため、勝手に引き上げてしまったら、国際問題へと発展します。(海洋調査や浚渫工事中などに発見したら必ず報告しましょう!もし本当に外国の船だったら賠償金の支払いや国際裁判など大変です。外務省とか、場合によっては安倍さんも対応するような事件となる可能性もあります。時価何億円の財宝を✖️✖︎会社が破壊!スペイン政府から賠償要求!とかニュースになったら大変) 第2次大戦の時のアメリカ軍のモノも同じですね。実は、日本政府も同じように外国に対して日本の所有権を主張しています。

最近では、いろいろなケースがあり、厳密に所有権を行使する例は少なくなっています。それよりも、沈没船を地域の文化遺産としてみた場合に、どのように管理するのが最善であるかを利害関係者で話し合って決めることが多くなっています。

そこで、タイタニック号。この船が発見された1980年代は、まだ沈没船を保護する法律がありませんでした。つまり、サルベージ 法が適応されます。この場合、慣習として、何かを最初に引き上げた人が所有権を得ます。発見したロバートバラード博士は、遺物を一切引き上げずに調査を終えています。彼曰く、「タイタニックのような沈没船は、人類共通のメモリアルとして残す必要があり、墓荒らしのような行為はしたくなかった。また、他の人も同じようにこの事故で亡くなった人に敬意を払って、引き揚げる人はいないだろう」

しかし、現実は甘くなかったようです。ベンチャー企業が引き上げを行なってしまい、その会社がタイタニックの遺物のオーナーとなってしまいました。詳しい法律の話はしませんが、いろいろありまして、結局、裁判所からの判断により、引き上げた遺物は一括で管理され、また、研究や一般への公開は積極的に行うことが条件として課せられました。

これで、一件落着?にはなりませんでした。こんどは、所有権を持っている会社が経営破綻。所有権を売却・譲渡することに。現在、名乗りを上げている会社がいくつかあるようですが、イギリスの博物館が権利を得る可能性があるようです。

ナショナル・ジオグラフィック社のニュースタイタニックについて

現在、タイタニックに類似するような遺跡が発見されても、おそらくドロドロ劇はないかと思います。色々な問題があるでしょうか、遺跡として保護していくには誰(どこの国)が活用・運営するかなどで問題となるでしょう。

 

ちょっとシリーズに挑戦。次回は、これらのケースを紹介しようかと思います。

沈没船はフランスのもの!トレジャーハンターにモノ申す。

イギリスからカナダへ所有権の譲渡

 

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