沈没船の所有権について その2

所有権について。

予定していたお話とは、違いますが。

沈没船が発見された場合、とある国が所有権を主張しながら、別の国が主体となり発掘することはよくあります。特に船という道具が、国境を越えるために作られたモノですから、多くに国々で領海内に他国籍の沈没船が数万件あるのは常識です。

軍艦などが発見されると、所有権が問題となることが良くあります。これは、他国の権限を制裁・強行できる法律がないためであり、また、軍艦の取り扱いについても、正式に決められた国際法はありません。曖昧なものや、複数の国の間での合意などはありますが、整備されていません。ユネスコ水中文化遺産保護条約は、実は所有権や軍の所有する船舶については、「これまでの慣習に従う」として、特に規定はしていません。ただし、海洋基本法もそうですが、基本理念として、利害関係者および社会・人類の共有の財産として適切に判断することが望まれています。

これまで、慣例として軍艦など国が所有していた船は、その国に所有権があると考えられています。たまに、沈没船が長期放置されたのだから、管理責任を放棄していると考え、所有権も存在しないと主張する人もいます。多くに国は、軍が所有したモノは、時間がいくら経過しても、船籍(所有権)は失われないとしています。そして、それを宣言している国も多くあります。

そこで、こちらのリンク先。ちょっと読みにくくて申し訳ないです。

https://www.gpo.gov/fdsys/pkg/FR-2004-02-05/html/04-2488.htm

アメリカが、自国の軍船などの所有権を他国にも向けて宣言した際、いくつかの国から、軍船などの取り扱いについて意見を聞いております。その回答が、文章で各国から提出されています。

 

まず、日本の回答を見て見ましょう。

`According to international law, sunken State vessels, such as warships and vessels on government service, regardless of location or of the time elapsed remain the property of the State owning them at the time of their sinking unless it explicitly and formally relinquishes its ownership. Such sunken vessels should be respected as maritime graves. They should not be salvaged without the express consent of the Japanese Government.” Source: Communication from the Government of Japan, September 13, 2003.

回答は、アメリカの領事館を通して提出されています。「日本の(軍)船はどこにあっても、日本が所有権を保有している。日本が正式な文章によって権利を譲渡することは可能であるが、海の墓として尊重されるべきである。」遺骨などもあるため、リスペクトしなさい!ということですね。

さて、次にロシア

Russian Federation: “Under international law of the sea all thesunken warships and government aircraft remain the propertyof their flag State. The Government of the Russian Federation retains ownership of any Russian sunken warship, including the warships of the Russian Empire and the Soviet Union, regardless the time they sank. These craft are considered places of special governmental protection and cannot be salvaged without special permission of the Government of the Russian Federation.” Source: Communication from the Government of the Russian Federation, October 3, 2003.

帝国時代のものも含めてすべてロシアが所有していますということで、許可なく引き揚げはできません!ということです。所有権ですから、その権利を破棄したり譲渡することができますし、国からOKが出れば問題ないわけです。国といっても、外務省なのか、その上なのか、軍なのか?

 

では、まとめ。

戦闘中に沈められた船であれば、国の所有は変わりませんが、捕獲・譲渡の場合は所有権は移ります。なので、日本の場合、無条件克服後は、すべてアメリカ軍の所有となります。

自沈した場合は、戦闘中であれば撃沈されたものであると想定しているようですが、場合によっていろいろあるようです。戦争終了後に破棄した場合は、所有者なし。発見した側が所有となります。

色々書きましたが、現在、ユネスコ水中文化遺産保護条約は、世界60カ国が批准しています。また、批准していない国々の多くは、ユネスコの理念やイコモス憲章の理念をベースに水中文化遺産の保護に取り組んでいます。所有権はあったとしても、さまざまな利害関係者と密に連絡を取りながら、最善の対策をとって保護を進めていくのが基本となっています。特に戦争遺跡は、実際にその場所で亡くなった方も大勢います。それらの方々をリスペクトし、メモリアルとして保護していくことが世界の常識となりつつあります。

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