破壊される遺跡

今日は、写真とリンク多めで。

 

こんなニュースを今日、見ました。それほど目新しくない…タリバンによる遺跡破壊もありましたし、ほんとにバーミヤンのような貴重な遺跡が破壊されるのは、嫌な気持ちになります。

https://www.iwate-np.co.jp/article/kyodo/2020/7/22/517593

ですが…遺跡の破壊はどこでも頻繁に起こっています。そう、今、あなたの足元にも調査されずに破壊された遺跡がある(あった)かもしれないのです。

 

特に、日本では水中遺跡の保護体制がほとんど機能していなかったのが事実です。世界の国々では、それぞれの国で水中遺跡の数が数万件ありますが、日本は数百です。そして、多くの国は、日本よりも海の面積は相当小さいです。日本の周りには数十万件の水中遺跡があったとしても、「それぐらいあるよね」というのが、おそらく正しい反応。

さて、こちら、スコットランドの水中遺跡地図の一部。

 

https://canmore.org.uk/site/search/resultSITEDISCIPLINE=3&SITECOUNTRY=1&view=map

陸に近い所にたくさん遺跡があるのがわるでしょうか? そう、水中遺跡の9割が陸に近い場所、水深40-50mよりも浅い場所にあると言われています。次に、下は、オランダ周辺の遺跡地図と日本地図をサイズを揃えて作図した図です。ポツポツは、遺跡の候補地ですが、およそ7万点あります。これらは、海洋開発の際の事前調査で発見されたポイントです。

 

日本の場合、同じ範囲に水中遺跡がいくつ確認されているかご存じでしょうか?

https://www.maritiem-erfgoed.nl/sites/default/files/field_attachments/2-v2-rce016-proefschrift_martijn_manders_waddenzee.pdf/2-v2-rce016-proefschrift_martijn_manders_waddenzee.pdf

 

さて、次に日本の某湾周辺の遺跡地図を見てみましょう。埋め立て地にはきれいに周知の遺跡がないですね~。昔の海岸が良くわかります。

 

そして、こちら、イラスト化したサンフランシスコの地図。調査された船の位置を落とし込んでいます。サンフランシスコは、ゴールドラッシュ時に急激に多くの土地が埋め立てられた、ちょっと特殊な歴史背景ではありますが。コメ粒のようなのが船です。

https://www.nationalgeographic.com/news/2017/05/map-ships-buried-san-francisco/

San Francisco’s ship cemetery: The Financial District

そして、こちら。70~80年前は、埋め立て地を作る際に調査をしていなかったので、昔の埋め立て地の下から沈没船が出てくることが良くあります。こちら、ニューヨークのワールド・トレードセンターの下。あのテロ事件で破壊されたビルです。その下から、沈没船が発見されています。

https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-2709963/Scientists-solve-mystery-shipwreck-world-trade-center-Analysis-tree-rings-finds-ship-built-1773-Philadephia.html

たとえ埋め立て地でも調査が必要ですね…

最後に最近のエネルギー開発について

洋上風力発電に関して、日本でも本格的に始まろうとしていますが、特に水中文化遺産については、言及していません。遺跡調査せずに風車が並ぶ可能性が高いです。パイプラインなども埋めるため、広い範囲で海の環境が変わり、水中遺跡が間接的に壊される可能性もあります。諸外国では、洋上風力発電のおかげで、水中遺跡発見ブームが起こっており、事前調査は常識。

https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/

アメリカのエレルギー庁のページには、パイプライン工事などで発見された遺跡が紹介されています。写真などの情報、3Dモデルもウェブサイトで見ることが出来ます。

https://www.boem.gov/environment/virtual-archaeology-museum

というわけで…まとめ。

 

遺跡の破壊は現実におきています。見えないだけです、埋まっているから。それを食い止めるため、洋上風力発電に際して水中遺跡の調査、海の開発の前になにがあるか調べます。

日本の場合、そのシステムがなかなか機能していません。そもそも、水中遺跡の存在を知らない人が多い。

「私は、水中遺跡の専門家ではない」、「水中の遺跡とは関係がない」、「予算がないからできない」、「海や埋め立て地を調査する方的根拠がない」、「管轄が違う」、などと言っている間は、遺跡の破壊はとめられません。

「予算をつけてくれれば、やるけど…」などと他人事を言っているようでは、破壊を容認しているだけです。遺跡を守るために何ができるか、一人一人が出来ることを考えて欲しいと願っています。

水中遺跡について知らなくても、ちょっと調べて、多くの人に話す事。地域で水中遺跡を調べている団体などがいれば、なにかしらのサポートをする。洋上風力発電計画などがあれば、意見書を提出するなど。また、工事関係者も、遺跡が有るかもしれないと自覚を持つこと。いろいろできることはあるかと思います。

 

現状を知らない人が多いようですので、周知させていくしかないようです。水中遺跡の調査をできる人がいても、調査をする機会もなく、職もありません。少しでも声を上げてくれる人がいれば、何かが変ると思います。ユネスコも日本の現状に対して懸念を抱いていることは事実です(昨年度、私自身、実際にユネスコの水中文化遺産保護条約の総会に参加しました)。

 

現在、日本で自然海岸が残っているのは5割程度でしょうか?そこは、調査されずに埋め立てられている場合がほとんど。そして、これからも海洋開発が進めば…。バーミヤンの遺跡破壊のほうが、まだましだった、と言われても反論できません。

 

タイムリミットは迫っています。40~50年後には、「日本近海の水中遺跡の98%が破壊されていることが分かりました!」という研究成果が出てくるかもしれません。そんな研究は、見たくないものです。

 

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