沈没船の墓場

かなりインパクト強めの映像…。ニュース記事の書き方が気になります。

あたかも、隆起により一気に沈船が出土した!ように聞こえますが、事実ではない。報道の仕方には疑問。また、文化遺産としての価値や歴史背景など全く無視しての報道。ですが、今回は敢えて、その報道にのっかります。言いたいことは2つ。

このような「文化遺産」。放置しておくと劣化が進みそのうち消滅してしまう。同じような文化遺産は水中にも多く残っている。これらも、劣化が進んでおり、開発で破戒されている可能性も高い。

また、関連して…戦時下では、このように廃船を使って港を作ったり水路を封鎖することはよくある。類似例では、デンマークのロスキレ沈船が有名なので、ちょっと紹介します。

1.放置しておくと劣化・消滅の危機

ユネスコ水中文化遺産保護条約では、100年以上前から水没している物は、水中文化遺産としています。第1次大戦中に水没したもの、すべてが文化遺産です。また、地域にとって重要なものは、100年を待たなくても文化遺産となります。オーストラリアでは、基準が75年ですので、太平洋戦争時の水中遺跡が登録されています。旧日本軍の潜水艦などもオーストラリアの文化遺産として登録・保護されています。

一方、日本のこの船体。このままでは錆がどんどん進行していきます。水中に残された遺産も劣化が進みます(陸上の方が酸素に触れるので劣化のスピードは速い)。それらの遺跡、守るのが難しいですが、記録に残す作業、消滅する前に多くの人に知ってもらうこと、これが重要です。

 

一度無くなると、見ることが出来ません。そうなると記録・記憶に残らない…しっかりと記録に残しておくことが必要です。

 

 

数年前、カンボジアの第1次大戦と水中文化遺産についての特別展示があったようです。水中文化遺産を保護していく、戦争遺跡を伝えていく活動は、世界各地で行われています。カンボジアの展示について

 

さて、今回の沈没船群。海上保安庁がきちんと場所を把握しています。観光客も訪れることが出来ます。意外とYoutubeなどにも映像を上げている方がいらっしゃるようですし、有名と言えば有名です。上の画像は、海知るからの引用です

さて、海知るでは、様々な海のデータをみることが出来ます。沈船と海底障害物を表しています。障害物(赤のmark)は、漁礁や人工物、様々な海底障害物ですが、「不明」のものもあります。もしかしたら、水中文化遺産もあるかもしれません。黒の船は、沈船ですね。たくさんあります。主に戦争中のものや1945年以降のモノですが、なかにはもっと古い沈船もあります。これら、把握はしていますが、考古学的な記録はされていません。確実に劣化していきますし、港湾工事などの際には撤去される可能性が高いです。文化遺産としての価値は考えられていません。

関連して…デンマークのロスキレ沈船!!

船を沈めて水路を塞いだり港を作る行為。過去から事例がたくさんあります。古今東西共通です。日露戦争でも、旅順港閉塞作戦は有名です。

私が紹介したいのは、デンマーク、ロスキレ湾のスカルデレブ沈没船群。デンマークのヴァイキングシップ博物館に展示されています。

え、ヴァイキング?そう、1000年前の海上封鎖の跡です。おそらく、敵に攻めこまれるのを防ぐため、船を沈めて通りにくくしています。類似例になるのか?と思うかもしれませんが、「戦闘行為に備えて船を沈める」という行為は同じです。船が最初に発見されたのは、1920年代ですが、発掘は1960年代。ドライドック方式で発掘されました。

ダイブ昔の発掘ですので、図がちょっとざっくりしてますが、リサーチはしっかりしています。

船体の図

発掘当時の写真など

                   くわしくは、こちらで。(PDF1)(PDF2)

ロスキルダ博物館の展示。船は丹念に研究され、当時の技術を使って復元船が造られています。地元のセーリング・クラブがその船を使っています。また、博物館の外では毎年のように、復元船を作っているようです。当時の工具を再現して作っています。博物館に訪れた人は、造船の様子を生で見ることが出来ます。

引用元:https://news.yahoo.co.jp/articles/1071ca56802d790068fcb40b5306c8ad39424cba

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